ビスケットの缶

Extremely Loud & Incredibly Close

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 ふう、とひと呼吸したら一年の1/3が過ぎていました。
今年はゆっくりと春がやってきていて、余計に時間の流れがわからなくなっています。

 最近読み始めた本”Extremely Loud and Incredibly Close”は、ロシアのフィギュアスケーター、メドベデワ選手の2016-2017シーズンのFSの演技を見て、興味をもって手に取りました。今はお兄ちゃんと一緒に競争しながら読んでます。(もちろんとっくに追い越されましたが。笑)
 最初の2章を読むまでの間に、主人公とお父さんやお母さんとのなにげない会話や主人公少年の心の繊細さにほろりとするシーンが何度もありました。お父さんとお母さんとのやりとりは、心地よいブランケットにくるまっている時のような感覚に胸を締め付けられます。
 読んでいるうちに、主人公のオスカーがライ麦畑のホールデンと重なるように思えてきました。二人の年齢はだいぶ違いますが、大切にしているもの、ピリピリととがったような心の感覚がとても似ているように思えます。この本の主人公のオスカー少年は、9歳という年齢にに対して知識や言葉がとても豊かで、そのために大人からは時に眉をひそめられるような言動をしてしまったりするところもホールデン少年と似ています。9.11のアメリカの同時多発テロ事件でお父さんを亡くしてから苦手になったもののリストや、「学校に行けない」とお母さんに言った朝、病気なの?と尋ねるお母さんに、病気ではなくあらゆることが悲しいからと指で数えながら教える悲しいもののリスト。美しい歌も悲しいと言うオスカー少年によると「なぜなら、それ(歌の中の世界)は本当ではないから。」それは、ホールデン少年がサリーに電話をしてサリーが最後に添えた”Grand(ご機嫌ね)”という言葉にうんざりしてしまうような感覚に似ているのかもしれません。
 また、読んでいるうちに、ふと弟くんのことを思い出しました。ある日突然、日本の鉄道ミュージアムでもらった運転士の白い手袋の片方だけをはめて学校から帰ってきたり、古いテニスボールを学校で拾って何度注意しても大事にしていたり。そういう弟くんについ、なぜ?、どうして?と眉をひそめて叱ってしまっていました。いつの間にそういう大人になってしまっている自分に気づかされる思いがして目の奥が熱くなりました。オスカー少年のお父さんはオスカーくんのひとつひとつの言葉を両手でそうっと包んであげるようなお父さんで、そのやさしさに胸がいっぱいになります。お父さんはオスカーくんに、こう言います。「親はいつだって子供より知識を持っているものなんだ、でも子供はいつも親よりもかしこいんだよ。」
 亡くなったお父さんの遺品から見つけた謎の鍵を手に、まだまだ始まったばかりのオスカー少年のお父さんの秘密を探す旅。私も英語に四苦八苦しながらもなんとか読み終えられたらいいな、と思います。


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今日の羽生くんメドベデワさん

2017年 ヨーロッパ選手権 FS ”Extremely Loud & Incredibly Close”


 平昌オリンピックでは銀メダルになったエフゲニア・メドベデワ選手の、2016-2017シーズンのフリープログラム。
静かだけど、物語にあふれるプログラムを初めて見たとき、とても心を打たれて強く印象に残りました。
 誰かを見送りに(お父さんかな)駅に行くところから始まるプログラムは、まず見る人を物語の中へ引き込みます。
中盤の町の喧騒、人の話声、サイレン、叫び声、その中をステップを踏むメドベデワ選手。目に見えないNYの町の蒸気、車や消防車、人混みが目の前に映し出されるように見えてきます。人の波に流されるようにくるくるとステップを踏むメドベデワ選手、逃れられない運命や悲しみに飲み込まれていく様子が表現されるように感じました。そうした現実をぴたりと音楽に合わせたトリプルループジャンプで場面が転換されます。後半の鮮やかで美しいジャンプの連続のシーンはオスカー少年、もしくは誰かの心の中の旅なのかもしれません。誰もが悲しみや心の波を抱えていてそれを乗り越えようと生きている。
 最後美しいビールマンスピンの後、電話の音がなりメドベデワ選手が受話器を取るところでプログラムは幕を閉じます。電話は誰からなのか、いい知らせなのか悪い知らせなのか、メドベデワ選手の表情からはわからないところで終わります。振り付け師のイリヤ・アベルブフはそれは見た人にゆだねたいという思いで振り付けたのだと聞きました。映画のサウンドトラックをもとに作られたプログラムですが、物語に忠実にではなく日常に潜む避けられないものやるかたないもの(確かそんなことを言っていたと思います。)を描いた作品なのだそうです。生きる悲しみ、喜び、さまざまな感情が表現されているように感じて、プログラムを見てとても共感するものがありました。
競技ということを忘れさせる圧倒的な物語を演じるメドベデワ選手の演技とプログラムは羽生選手と重なる部分があるように思えてとても好きなプログラムです。


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by cinnamonspice | 2018-05-01 16:04 | | Comments(2)
Commented by cloversdesign at 2018-05-02 07:51
魅せますね〜、田舎から都会へ不安と希望を抱いてやってきた
少女を連想させますね人に揉まれながら現実を生きて行くってどこの国でも共通ですね。
シェアありがとうございました。
Commented by cinnamonspice at 2018-05-04 05:05
+ cloversdesignさん+
メドベデワ選手の演技力もすばらしいですよね。
あまりにジャンプやスピンも安定しているので、すっかり競技ということを忘れて技のことを忘れて見入ってしまいます。
都会へ上京していく女の子、そんな風にも見えますね。
理想と現実と、いろんなことにもまれながら抵抗しながら生きていく大変さ、それが若さでもありますね。オバサンは流されっぱなし(笑)