人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ビスケットの缶

儚さ

儚さ_c0033994_02085586.jpg
引き続き金色夜叉を読んでいる。
(金色夜叉は前編、中編、後編、続金色夜叉、続続金色夜叉、新続金色夜叉という6編からなって、想像よりも長いことを知った。また作者が亡くなったため、未完である。)
さて、話は、熱海の浜辺で貫一青年が裏切られた、とお宮を蹴って、前編は衝撃的なラストを迎える。
(時代背景を考えても、想像以上に思い切りで流血するほどには驚いた。)
中篇からその後4年後の二人が描かれる。
行方をくらまし、人が変わったように高利貸しとなった貫一。
胸のうちにくすぶる貫一への想いを抱えて(生まれた子供とも死別して)富山夫人として暮らすお宮。
偶然にも、冷酷にもともいうべきか、二人を運命の糸が再び再会という形でたぐりよせる。
その後、貫一は旧友と再会もするものの、お宮との再会がさらに貫一を冷徹な高利貸しの役へとかりたてる。
どこまでも、悪魔のようになって自分を貶めることで自分を責め生きる貫一、変わり果てた貫一との4年ぶりの再会にさらに胸を痛めるお宮。
それぞれ地獄のようなところで生きている。
ある瞬間の判断ひとつで、人生が変わってしまうことがある。
誰もがそんな瞬間を重ねて生きているのかもしれない。
誰が正しくて、誰が間違っているのではなくて、人の悲しみと愛を描いている。

by cinnamonspice | 2015-09-20 02:10 |