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ビスケットの缶

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弟小人のPreschoolの道に椿の花が落ちていました。
美しい姿のまま潔く落ちた花に、ブローチみたい、と胸にあててみました。
そういえば、小さいころ、我が家にも椿の木がありました。ビロードのような花びらの感触、気持ちよくほどける花びら。その花びらでごはんを作ったりして遊んだっけ。思えば、父の庭では、春には白いかわいい桃の花が咲き、気持ちのいい風が吹くころにはピンクのつつじの花、梅雨には紫陽花、夏には朝顔が咲き、秋には金木犀が香り、凍える冬には椿の花が咲いていたっけ。父は季節ごとに、年に何度も大掛かりな模様替えをして(私たちが生まれる前は池があったとか)、花だけでなく木も入れ替えていました。夏のはじまりの季節、父の手製の縁側に座って、黙々と働く父の様子を見ているのが好きでした。設計図もなく、父の頭の中の世界を形にしていく…汗かきの父は首にタオルを巻いて大きな石を並べて花壇を作り、小道を作っていました。あるときは逃げ出したカメを探して歩き、ある時はウサギが駆け回り、あるときはインコがさえずり、犬も暮らした庭でした。そこに暮らす住人は入れ替わりながら…。猫の額ほどの庭だったけれど、つつじの花の蜜を吸ったり、つげの葉でお茶を作ったり、笹の葉に七夕飾りをしたり、今思うと、あの庭は父が思いのままに治める小さな国であり、お日様が昇って沈むまで思い切り遊んだ小さな私たちの夢の国でもありました。親になった今、私は小人たちに、そんな庭を贈ってあげることができないことを時々残念に思います。親になると欲ばりになってしまうけれど、移り行く季節とともに、きっと小人は小人たちなりの、思い出を作っているのかな。
by cinnamonspice | 2011-01-23 03:08 | すきなもの