人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ビスケットの缶

黒電話

黒電話_c0033994_15571017.jpg
チョコレートケーキを焼きました。
中には、去年煮た栗の渋皮煮を刻んで、アクセントに。
「家の電話を黒電話にしたのよ。」
少し前のこと、友達からそんな電話がかかってきました。
「受話器は重いけれど、線でちゃんと繋がっているというのがいいんだよね。あぁ、この線の先に今話している相手の人がいて繋がっているって言う安心感というのかな。ぜひ体験しに、今度電話しにおいで。」
そう言われ、遊びに行ったとき、実際に電話をかけさせてもらいました。(お友達のおうちのものは懐かしいプッシュボタンでした。)友達が黒電話に変えた理由は、ワイヤレスだったときは、電話をしていると途中で電話が切れてしまったり、相手の声がとぎれとぎれになったり、電波が定まらなくて不便なことが多かったのだとか。その感覚、すごくわかるなぁとしみじみでした。便利さを求めて見えないものに頼る一方、時々その目に見えないものに翻弄されているような気持ちになります。

「でも、もちろん、受話器がコードで繋がっているから、電話中何かしたいことがあっても、線の長さの距離しか移動できないのが悩みといえば悩みだけど…でも、相手の声がはっきり聞こえる、それが私にとっては重要。」
と言う、彼女の言葉がずっしりと胸に響きました。

受話器から聞こえる発信音、黒電話の受話器の重さ、ジコジコというダイアルが戻る音、受話器をかけたときのチン、という音。きっと、小人たちの世代にはない音、感覚なのかな。そんな“黒電話”のことを考えたのは、J.D.サリンジャーの「Zooey」の本を読み終えたところだからかもしれません。
by cinnamonspice | 2010-10-22 15:58 |