夕焼け空
夕方、近くの駅からの父の電話がかかってくると、母のつっかけのサンダルを履いて父を迎えに行ったっけ。真っ赤な夕焼けの向こうで手を振る父の日に焼けた大きな手。「お帰り、」と抱えた父の革の鞄はとても重くて、その重さに父の仕事や家族の重さを幼いながらもなんとなく感じました。父と上った帰りの坂道は、春にはにょきにょきと顔をのぞかせたツクシん坊、夏には盆踊りの太鼓の音に背中を押されながら、秋には一面の金色のススキと鈴虫の合唱のなか、父と手をつなぎながらいくつも季節がめぐっていったっけ。夕焼け空の下、大きくてあったかいものに包まれていた幸せな時代を思い出すと、嬉し涙とも悲しい涙とも違う、名前のつけられない涙がこみ上げてきます。今、小人たちはそんな時代のなかにいるのかな。
by cinnamonspice
| 2010-06-14 15:55
| 今日のおやつ