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ビスケットの缶

あてどなく歩く

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ジョシュアツリーではボルダリングをする若者が増えていて、背中にマットレスを背負った若いカップルをよく見かけました。
私たちのキャンプサイトの裏はトレイルのようになっていたので、そこを歩いてきたボルダリングのカップルが
「このあたりにハート形の岩があるって聞いたのだけど、知ってる?」
と尋ねてきました。
私たちは初めて聞いたので、「知らない、ごめんね」と答えたあと、私たちはランチを食べてのんびりすごしながら、あのカップルはハートの岩を見つけたかな、と話していました。しばらして、近くを散策に行こうか、と言ったとき、ふと思い出して私とだんなさまの二人でそのハート形の岩を探して歩いてみることにしました。

道なき道を歩いていきます。
家の周りでしていたら不審者と間違えられてしまいそうですが、あてどなく歩くことができるのが国立公園の楽しみのひとつです。
町で暮らしているときは、どこか出かけるときは理由や目的があるからこんなふうにふらふらと歩いていると、いろんなものから解放されて自由になる気持ちがします。
よく見ると、岩の上では真っ黒のトカゲが腕立て伏せをしていたり、リスの仲間が二本足で立ってきょろきょろあたりを眺めているのを見つけました。
岩陰にはサボテンが鮮やかな赤や紫の花をつけてこの冬の恵の雨と、春の訪れを喜んでいるようでした。
ハート形の岩は見つけられませんでした。もしかしたら、若々しいカップルしか見つけられないのかもしれないね、と笑いながらキャンプサイトへ戻りました。

アメリカに来て、時々こうして自然へ行って心を開放してきます。
Escape=逃げる、というのに近いけれど、そうすることでバランスが取っているのかもしれません。
学校からも、時間からも何にもとらわれない時間は貴重な時間です。
子供たちと一緒に、岩山の高いところまで登ってみました。
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恐竜が走っていそうなジョシュアツリーの木々と岩山の景色がどこまでも広がって、ミニチュアのような車や人が小さな豆粒のように見えました。
こういうところから世界を見ると、私たちはちっぽけだなぁ、つくづくそう感じます。
時々、突風が吹いて、立っていると体ごと落とされそうになって、岩山にかじりついて眺めていました。
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国立公園でキャンプをするたびに、自然はお母さんと似ていると思います。
私たちは、お母さんに会いに行くように自然を訪ねるけれど、自然は優しいだけじゃなくて、結構厳しい。
それは、猛烈な暑さ(日差し)だったり、寒さだったり、風だったり。
この日も夕方には急に突風のような風が吹きました。ジョシュアツリーでは春、よくこの風に悩まされます。以前、キャンプしたときも、テントがひしゃげてつぶれるほどの風が一晩中吹いて、翌朝テントをたたんでいるときにテントのポールが折れてしまったことがありました。
いつやむかわからない風に、今回も慎重に自然の顔色をうかがいながら、早めの夕飯にしました。
たき火も用心しながらつけてみました。
一通り、夕飯を終えると、ぱたりと、風はやみました。
そして、コウモリが飛び、とっぷりと日が沈み、たき火のぱちぱちという音と、煙の臭い、スモアーをする子供たちの笑い声だけがこだまします。
そして、満天の星空がまたたく静けさに包まれました。
夜中、コヨーテが鳴いて、時計を見たら1時半でした。
自然はみんなでリレーしている。
いつも会えないDesert Turtleが、どこかの岩陰で眠っているところを想像しながら眠りにつきました。
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翌日、岩山散策をしていたら、弟くんが「ハート形の岩山を見つけたよ」と教えてくれました。
家に帰って調べたら、カップルの二人が言っていた、ハート形の岩はWhite Tankのそばにあるものだと知りました。
家族みんなで見つけたハートの岩は、私たちの思い出のハートの岩となりました。


by cinnamonspice | 2017-04-09 09:32 | キャンプ