ビスケットの缶

candle night

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 昨日、停電があった。少し前に届いたお知らせの紙には、朝の9時から夜の6時半までと書いてあった。それを見て、この数日30度を超える日が続いているので冷蔵庫の食べ物のことが心配になった。とりあえず、冷蔵庫のドアを一日開けないことで乗り切ることにした。それにしても、うちはキッチンのストーブも電気のものなので、一日お茶を一杯も、料理も何もできない。しかも、この日は学校のBack to School Nightと重なっていたので本当にあたふたな一日だった。夕飯は少し早く食べる必要があったので、小人たちと外で食べることにした。
 おそらく、学校のイベントが終わったころには終わっているはずと出かけたのに、家に帰るとアパートのあたりが暗い。嫌な予感がすると、やはりまだ停電が終わっていなかった。真っ暗なパーキングから小人たち用に用意したフラッシュライトを手に出てくる。車のライトが消えると見事に真っ暗で、まるでホーンテッドマンションだ。フラッシュライトの一筋の明かりに、暗闇から停められた車たちが廃墟のようにぼうっと照らし出される。小人たちは小さな物音にもドキドキしながら、パーキングを出た。エレベーターは動かないので、一度外に出て階段を使う。家の扉を開けても、正しい暗闇が待っていた。アパートのほかの住人は、デッキでキャンドルを囲んですごしたり、誰かが用意したランタンを囲むように中庭で集っていた。我が家も慌てて、家中のキャンドルホルダーを出してキャンドルをともした。ライトの明かりと比べるとつけてもつけてもキャンドルの明かりは頼りない。15個はともしただろうか。「キャンプみたいだね。」小人は楽しそうだった。
 暗闇を怖がる弟小人のために、ベッドにキャンプ用のほおずきライトをともして彼らが眠りに就くと、夜の10時、だんなさまと二人、ちらちらと踊る暖かいキャンドルの薄明かりの中残された。
「キャンドルの明かりはいいね。」
だんなさまはのん気に言っている。
「でも、できることもないし暗いと眠くなっちゃうな。」
なんて、ソファでうとうと。
電話も、インターネットも、できないと言われると使いたくなる。終了予定時刻をゆうに過ぎているのに、まだ工事は終わりそうもない。私はしきりに冷蔵庫の食べ物のことが気になって家のなかをそわそわ無駄に歩き回っていた。そのとき、ふと、今日キッチン用に買ってきた電池式のポータブルプレーヤー($5の戦利品)のことを思い出した。リビングへ持ってきてEric Claptonをかけてみる。たよりなく感じたキャンドルの明かりが輝きを増したような気がした。そのあと、Ella FitzgeraldとLuis Armstrongのアルバムをかけた。家という箱にEllaの声が響く。キャンドルのまたたきと声がシンクロしているみたいに感じる。どんよりと停滞していた時間にも明かりがともるようだった。クラッカーをぽりぽりとつまみながら、これで冷えたワインやビールがあったらもっとすてきだけど、と冷蔵庫に眠るビールやワインのことを想像してみる。美しい歌声が冷蔵庫の食べ物や工事が今晩中に無事終わるのかという心配事をみんな洗い流してくれるようだった。Ellaが「Autumn in New York」を歌っている途中で、ライトが点いた。急に光に包まれて、あれだけ待ち焦がれた光だったのに、なんだか興ざめするような不思議な気持ちだった。間もなく、冷蔵庫もブーンと動き出した。時計を見ると11時だった。
ただ音楽とキャンドルのまたたきだけが点った夜はことのほか心地よかった。あ、でも停電はもうこりごりだけど。
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by cinnamonspice | 2014-09-12 02:27 | まいにちのこと | Comments(2)
Commented by miholife at 2014-09-17 16:47
*cinnamon さん、こんにちは^^*
停電大変でしたね。
朝の9時から夜の6時半という時間もビックリだけど、夜の11時まで停電が続いたコトにはホントにビックリしました。
想像しただけで「こりごり」の気持ちがわかります。
30℃超えの日の冷蔵庫・・・アイスは入れられませんね。
そんな大変な状況も最後には楽しんでしまうなんて、素敵です^^。
電気のない生活・・・今のわたしたちには難しいのでしょうね。
3・11原発事故以来日本の電気事情は変わってしまいました。
省エネ・節電・電気料金の値上げ・・・。
節電を日々心掛けていても、オール電化というコトもあって、限度があります。
停電になると、当たり前のように使っている電気の有難さが身に沁みてわかりそうですね。
キャンドルの明かり優しくてイイですね^^。
Commented by cinnamonspice at 2014-09-18 05:17
+miholifeさん+
こんにちは。
停電があると、暮らしの大きな部分を電気に頼っていることを感じますね。アメリカの停電は日本では信じられないくらい長いことが多くて、しかも時間通りに始まらない/終わらないことが多いので困ります。なにより夏の停電は冷蔵庫の食品が困りますよね。停電の間、冷蔵庫は一度もあけないようにしてすごしたので、キッチンで、巨大な金庫のようにどーんと鎮座していました。
日本は震災のあと、電気事情がずいぶん変わったのですね。電気の需要は増えるばかりなのに節電、電気料金の値上げ、負担が大きいですね。
 キャンドルと音楽だけが響く夜は、いろんなことを忘れさせてくれるくらい雰囲気があってすてきでした。お誕生日に恋人が部屋一面にキャンドルをともしてくれたらロマンチックだなぁなんて妄想してみたり。(笑)たまにはそういう夜をすごせたらすてきですね。