ビスケットの缶

Bryce Canyon

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 去年、友人からブライスキャニオンの写真を見せてもらったとき、「古代遺跡」だと思った。ギリシャやローマの古代遺跡のように、不思議な形・レリーフの柱のようなものが円形劇場のような場所に数え切れないほど並んでいた。それらすべてが自然が作り出したものと知って驚いた。ぜひ行って見たいと思った。
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 ブライスキャニオンは、ザイオンから車で2時間ほど走らせたところにあった。天気予報のHeavy Rainという言葉の通り、途中はどしゃぶりの雨で、その雨を振り切るように走っても走っても激しい雨は続いた。どこからこれだけの量の水はやってきて、どこまでこの雨は降るんだろう、と不安になるほどだった。気温も下がって窓ガラスが曇ってきた。グレイの空と雨と道路、グレイの世界を走っていると、いつの季節にいるのかわからなくなった。ただただまっすぐの道を走らせる。道の両端には世界の果てまで続きそうな緑の牧場が広がり、360度地平線が見渡せた。しなやかなリボンのような小川がところどころに流れ、ヨーロッパを思わせるような豊かな緑の中、放牧された牛や馬が雨が降っていることにも気づかないように草を食んでいた。放牧といっても、小屋さえほとんどなく野生化した馬や牛たちは大きな緑の大地で豆粒ほどに見えた。道を走る車もまばらで、まっすぐな道に私たちの車だけということも少なくなかった。見渡す限り、まるで世界中から人が消えてしまったみたいだった。
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 ブライスキャニオンに着くと、雨が止んでいた。さっきまでの雨がうそのような青空がところどころにのぞいているのを見て、お空の気持ちが変わらないうちにと、そのままHoodooを見にSunset Pointへ向かった。目の前で見るHoodooは圧倒的なインパクトと想像をはるかに超える迫力とスケールがあった。遺跡の柱のようなものがずらりと並び、よく見ると城壁や古城の塔に似たもの、スペインのサグラダ・ファミリアのような教会、エジプトのスフィンクスや、秦の始皇帝の墓に埋葬された埴輪群のようなもの、そここに不思議なHoodooがあって見るものの想像をかきたてる。世界中を旅しているような不思議な景色だった。自然が作り出す多様な幻覚のような景色を目の前にしたとき、この景色を両親に見せたいと思った。心臓が弱く、先日も外出先で体調を崩して救急車で搬送され入院したばかりの父には、ここはとてつもなく遠くて無理な話だけど。最近は、こうしてすばらしい景色に出会うと、両親のことを思ってしまう。
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ジグザグの道を使った下へ下りていく。

 Sunset PointにはHoodooの下までいけるNabajo Loopというトレイルがあるので、下まで下りてみた。下へ下へ、おりるたびに地層の時代をさかのぼっていく。下のほうの地層は数億年前のものだという。私たちは今、数億年前にいるのだと思うと、見えない恐竜の気配を感じてわくわくしてくる。
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 Hoodooには人を引き込む力がある。下から見るHoodooはもっと迫力があって魅力的だ。
オレンジ色の泥の道を歩いていると、迷宮に迷い込んだような錯覚になる。自分がどこにいるのかさえわからなくなる。それは心地よい陶酔感に似ている。ネガティブな意味ではなくて、誰もが持つ現実から逃避したいという願望をすっと叶えてもらった気がした。
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ブライスキャニオンは標高8000ft(2400m)ほどのところにあるので、少し歩くと息が上がる。ぜんそくがある小人は、帰り道の上りの途中から少しみんなより遅れた。
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空を見上げると、ぐるりとHoodooに囲まれる。
力強いものに、守られているような安心感。

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by cinnamonspice | 2014-08-26 04:33 | まいにちのこと | Comments(0)