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ビスケットの缶

Wildlife

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Narrowsの帰りに出会ったミュール鹿。
野生の生き物は神々しい光をまとっている。

 小人たちとパークレンジャーの人から、コンドルの話を聞いた。コンドルを聞いて唯一私たちが思い出すのは、以前、サンディエゴの動物園で見たことだけだった。どの動物たちよりも離れた場所の岩山の崖のような立地で、人があまり来ないところにひっそりとあったとても大きなケージ、それがコンドルのケージだった。そのとき私たちのほかに人は一組だけで、私たちもコンドルを見に行ったのではなく、うっかり迷い込んだみたいな形でそこにたどり着いたのだった。ケージの地面には、何かの生き物の肉が置かれていた。何かに似ていると思って少しだけ近づいて見てみると、それは頭のないウサギだった。コンドルはそれを食べずに、じっと枝にとまってこちらを見ていた。真っ黒なフロックコートを着たような大きな体、禿げ上がった小さな頭に鋭い小さな目、赤い皺しわの顔、すごみのあるじっとたたずむ姿は、どちらかというと不気味に近い姿だった。頭のないウサギの体と、微動だにしないコンドルが死と結びついて、死神のようなインパクトがあって目に焼きついている。
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Narrowsの帰り、見上げた岩山の断崖にだんなさまが鳥の巣をみつけた。
もしかしたらコンドル?と胸が高鳴った。

 Zionには昔、コンドルがたくさん住んでいたという。それが、狩猟やコンドルの食べ物となる小動物たちが被弾した弾に含まれる亜鉛による中毒、食べ物になるネズミなどの生き物の体に入っていた毒(ネズミ退治用の)など、さまざまな理由から、野生のコンドルの数はゼロ近くまでに減ってしまったのだという。それ以降、動物保護団体や動物園の支援で保護し、人工保育をすることで少しずつ増えてきているとのことだった。人工保育では、雛にネズミと生卵をミキサーにかけたものを与えるというエピソードとともにスクリーンにフードプロセッサーの写真が映し出されたときには、みんな興奮気味だった。(あまり想像したくない。)コンドルは上から見ると、黒い羽根だけど、内側(空を飛んでいるところを下から見上げると)に、白いラインがあって、とても美しいことを知った。若いころは、禿げた頭ながら、首にふわふわのボアのようなファーがあるのがかわいらしかった。年を重ねるごとに、目の色が赤になり、顔の深い皺が増え黄色くなり、首がピンク色に変わりたるみ(食べ物を食べられるときにたくさん食べ収めておくため)凄みを増していく。人間が年を重ねる過程で嫌う特徴を兼ね備えているから、どうも見た目は好まれない。彼らが死肉しか食べない事に加えてそうした見た目に、人間は勝手に嫌悪感を重ねたのかもしれない。でも、その彼らを狩猟してその羽根を取り、売っていた私たち人間が罪深く感じた。
 最後にレンジャーの人によって、パワーポイントでコンドルが渓谷を飛んでいる姿が映し出された。大空を、胸にかけて白いラインのある大きな翼(広げると3メートルほどになるという)を広げて飛ぶ姿は、悠然としていて美しく、南米では神として象徴されるのも理解できるような気がした。青空の下、赤い岩山の間を翼を広げ飛ぶコンドルは迫力があって、山の主のように映った。自然公園に行き、パークレンジャーの人の話を聞くたびに、私たちも子供に還ったような気持ちになる。自然はどこまでも広く、私たちの知らないことばかりだ。
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ナニ?と今にも話し出しそうなリス。

今日も、旅のお話にお付き合いいただきありがとうございます。
もう少し旅が続きます。どうかお付き合いください。
by cinnamonspice | 2014-08-25 21:30 | まいにちのこと