ビスケットの缶

境界線

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小さいころ、母が毎晩、本の読み聞かせをしてくれた。
きまって一番最初に寝るのは兄(最初のページで眠ってしまう)、その次が私、そしていつも姉は最後まで起きていて、その本を何度も読んでそらで言えるほどなのに、「もっと、もっと」と言って眠らなくて母を困らせたのだと母は口癖のように言う。
兄弟3人みんなが大好きだったのは「くまの子ウーフ」の本。
「ウーフの朝ごはんは、パンとハチミツとめだま焼き。」
いつもそのくだりを呪文のようにみんなで声を合わせていたっけ。
その神沢利子さんに、小学生のころ兄弟3人で手紙を書いたことがあった。(私は幼稚園か小学1年生くらいだったから覚えていない。)とても有名な作家の先生だから、「ご返事なんて、いただけないだろう」と母は思っていたそうだが、しばらくして兄弟3人それぞれの名前宛に、先生の美しい直筆の葉書のご返事が送られてきたのだと、その話をするたびに母は感動しきりに言う。
その神沢利子さんはもうすぐ90歳になるそうだけれど、現役で新聞に連載をもたれていて、最近その記事に
「毎日、とろとろと眠っては目を覚まし、またうとうと眠ってという風に暮らしている。
年を取るとは、そして死に近づいていくというのはこういうことなんだなと思う。」
という内容のことを書かれていたと母が話してくれた。その言葉を聞いて、目の奥が熱くなった。年を取るということは、生と死の境界線がぼんやりとしてくることなのかもしれない。ふと、「はてしない物語」のカメのモーラのことを思い出した。夢の続きのように、眠るように静かな最後を迎えることができたら、本当にすばらしいことだと思う。自然の流れにあらがうことなく、自分の最後をそっと受け入れる、私もそんなおばあちゃんになりたい。
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by cinnamonspice | 2014-07-18 05:04 | すきなもの | Comments(0)