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ビスケットの缶

心のひだ

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週末に芍薬の花を買った。
花びらの外側(がくの部分)がうっすらピンク色の白い芍薬。
その淡いピンク色にうっとりと手に取った。
幾重にも重なる透き通るような白い花びら。
ふんわりと甘い香りが立ち上るよう。

めっきり涙もろくなった。年を取ったせいか場所をはばからずに涙が出る。
子供のころより世界の色彩はどんどん減っているように感じるのに、涙だけはよく出る。
顔にしわができていくように、年を重ねるごとに心にもひだが増えていって、曇っていく目の代わりに、目で見るのではなく心で感じるようになるのだったらいいなと思う。

 週末に小人たちの学校で、こどもの日のイベントがあった。毎年、子供たちがピアニカやリコーダーで「こいのぼり」の歌や日本の歌を演奏したり、ダンスなどを披露する。今年は小人たちは鳴子を、弟小人はダンスと和太鼓を演奏した。
 このイベントに、小人のKindergartenのときの同級生の男の子が見に来ることになっていた。その子は、Kindergartenだったある日、突然家で脳梗塞のような発作で倒れて、それきり寝たきりになっていた。倒れた当時、まだ6歳くらいだった。自分で呼吸ができず、意識もあったりなかったりという状態が続いていると聞いていた。話しかけても反応がない。でも、ちゃんと聞こえているんだとその子と子供同士が親しかった友人が話していた。脳に刺激を与えて、回復するきっかけになるからと、仲良かった子が病室へ遊びにいってベッドのそばでお話をしたりしていると聞いた。それ以来4年、ずっとリハビリを続けて少しずつ回復をして、この日こられることになったのだという。小人はその子とクラスも違ったので、私はその男の子と直接会話したことはなく校庭やイベントで見かけるだけだったけれど、色黒で元気な男の子だった。4年経った子供の日のイベントで見かけた男の子は、車椅子の上で透き通るくらい色白でやせて小さくなっていた。まだ呼吸は自分ではできないので呼吸器をつけているとのことだった。その隣にかがみこんで、呼吸器をチェックしたり、男の子の顔を覗き込むように笑顔で見つめるお母さんの姿に胸が苦しくなった。
 鳴子のパフォーマンスが終わると、4年生の生徒みんなで一緒に写真を撮った。そのときだった。その子がにこっと笑った。私が立っているところからも、その笑顔がはっきりと見えた。花が開いた瞬間みたいだった。この4年でぐんと大きくなった子供たちに囲まれて男の子とお母さんがにじんで見えた。だたただ胸がいっぱいになって涙が出た。
 そのあと、小人たちのパフォーマンスを見て、弟小人のお友達のママが声をかけてくれた。お友達は泣きながら、
「すごいね。小人くん肺炎から元気になって立派だったね。」
今度はお友達のあたたかい涙にもらい泣きした。

 今日は小人のクラスの日本語の演劇を見に行った。演目は「ネズミの嫁入り」。小人はチュー子とチュー吉の結婚に反対するネズミのお父さん役とのことだった。
「僕、意地悪な役なんだよ。初めて悪い役をやるんだ。」
と小人がうれしそうに語っていた。
 日本語が第一言語の子も第二言語の子も練習の成果があって、みんな台詞ひとつひとつがおなかから声が出て自信があって立派だった。途中の歌に、楽しい台詞やコミカルな動きに、見ているうちに子供たちの熱演に涙が出て困った。
「いつもほしいものを遠くばかり探している人は、すぐ近くにあるものに気がつかないのかもしれません。」
最後の台詞も胸にずしんと響いた。
毎年やっている演劇、どんどんみんなが上手になっていて子供たちの成長を感じる。小人たちの小学校生活もあともう一年。
あぁ、いろいろ思い出したら、また目の奥が熱くなってきちゃった。
by cinnamonspice | 2014-05-23 06:48 | まいにちのこと