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ビスケットの缶

あしあと

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子供が描いた絵を写してTシャツにしています。
そのときだけの字や絵。
描いた本人ももう二度とかけないそのときだけのあしあとのようなものかもしれません。
5歳の小人が描いた「5」の文字をTシャツに写してステッチをしたTシャツ。
11時間のフライトを経て、日本へ来ました。
到着した日、少しだけ立ち寄った実家で、お昼寝をさせてもらいました。
窓から吹き込む心地よい風に吹かれながら横になっていたら、子供の頃の昼寝のことを思い出しました。しばらくうとうとして目を覚ますと、懐かしい木の天井が眼に入りました。昔、木目がイカのおばけや人の顔に見えて怖かったっけ。あれから20年以上が経って、天井はあの頃より、あめ色を増して、いい色になって過ぎた年月を語っていました。いろんな思いがめぐって眠れそうもないので、隣で眠るだんなさまを残して、本棚のある部屋へ行きました。本を探しているうちに、山積みにされた小学一年生のころの自分の日記を見つけて手に取りました。
 日記を開くと、腕時計も持っていなかったあのころ、空が真っ赤に染まるまで、友達と遊んでいたこと。どこからか聞こえるチャイムに背中を押されて帰ったこと。6歳の私の毎日が映写機で映し出すように広がりました。ジャングルジムにはじめて乗った日、つり橋の最初の部分が壊れていて怖かったこと。でも、お友達の後をついてがんばって一緒に渡れたこと。先生、ジャングルジム上れたよ。何気ない一日に、先生のあったかい言葉がありました。
「またひとつ乗り越えたんだね。こういう一つ一つを乗り越えてみんな立派な大人になっていくんだね。先生は乗り越えられたかな。」
ジャングルジムにのぼれなかった私は、いつの間にか先生と同じくらいの歳の大人になっていました。あの頃受け取ったものの大きさ、もう戻れない幸せな時間を感じて目の奥が熱くなりました。そして、今、小人たちはその中にいるのだと。
 日記を書いていたのは、ちょうど今の小人と同じころの私でした。アメリカでの毎日で、小人の宿題を見るたびに、小人の字が汚いことをたびたび叱っていたけれど、日記の私の字は小人に負けないくらい見事な汚い字でした。その日記にあったかい言葉を寄せてくれる先生の返事。先生の大きさに比べて自分の了見の小ささを反省しました。先生のように子供と同じ目線で、大きなブランケットで包み込むように、子供と向き合っていきたい、そっと心に誓って日記を閉じました。
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弟小人は救急車の絵。
世界にひとつだけのTシャツ。
アメリカ人のママたちも褒めてくれました。

by cinnamonspice | 2011-06-24 05:28 | ひとつだけのもの