ビスケットの缶

エプロンの景色

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 小さいころ、母のたんすの引き出しは宝の箱でした。
今も、開けるとつんと鼻をつくしょうのうの匂いとともに思い出されます。私たちには届かない高い一番上の段にはベルトやネックレスなどのアクセサリー、真ん中の段には母が若いころ編んだというレースの夏物のカーディガンやワンピース、その下にはブラウスなどのトップス…そして一番下の段がエプロンがいっぱい入っていた引き出しでした。そこにはハーフエプロンから、胸当てのついたエプロン、糊のきいた冠婚葬祭用の真っ白なかっぽう着、タオル地のものから花柄、たっぷりのレースのついたものなど、さまざまな素材や柄のエプロンがぎっしり入っていて、こっそり開けるたびに心が躍りました。引き出しをあけては、姉とファッションショーのように着て遊んだこともあったっけ。あのいろとりどりのエプロンを思うたびに、母の匂いや、手の感触がよみがえります。母とつくしを取りに行ったこと、よもぎを摘んでよもぎもちを作ったこと、夕方、今ではなくなってしまった魚屋さんへ買い物に行ったこと…。あのころ母はよくエプロンをつけていたんだと気がつきました。
 私はというと、結婚した当初は母のようにエプロンを使っていなかったけれど、子供ができてからよく着けるようになりました。家でキッチンに立つ時間が長くなったからかもしれません。気がつけば、あのころの母と同じ年ごろになり、二児の母に。その私のエプロンは、キッチンにかけられただんなさまと共有の黒いエプロン1つだけ。それはキッチンに立つ人が儀式のように身に着ける、母のエプロンとはまったく違うものだけれど、でもそれが私たちのつむぐエプロンの物語です。エプロンには、いろんな人がさまざまな思い出を重ねるのだと思います。ふわりと広げたエプロンから広がる物語。あの色とりどりの母のエプロンには私の夢が詰まっていたのかもしれないと、今ぼんやり思います。そしてあの引き出しには母という夢が詰まっていたのだと。
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by cinnamonspice | 2011-04-14 14:17 | すきなもの | Comments(6)
Commented at 2011-04-15 00:41 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by sandy at 2011-04-15 10:02 x
こんにちわ。

私も小さいころ、魅力的でした。
母はいつもズボン姿で、その上から色や柄の入った
割烹着という、いかにも、田舎のおかあさん・・・
という感じでしたから箪笥の中にある、花柄のブラウスとか
レースの上着とかいつ着るんだろうと思うくらいでした。

だから、母の誕生日には、しゃれたエプロンをプレゼントしたのに、それこそ箪笥のこやしとなっていました。

でも、母にとって、そのスタイルが作業がしやすかったのかもしれません。

わたしはエプロンが好きで、何枚もありますが
それでも使い勝手のいい年代物?を繰り返し使っています。

いつか・・・割烹着が似合うようになりたいです。

お母様のお話を聞いて、ふと私の母のこと思い出しました。

cinnamonspiceさんのお母様のよもぎもち・・・
きっとおいしいんだろうな~♪
Commented by cinnamonspice at 2011-04-15 10:54
+鍵コメントさま+

こんにちは。
引越しのこと、いろいろありがとうございました。
おかげさまで無事決まり、ひとまずほっとしています。さぁ、5年分の荷物を整理しつつ、パッキングをしていかないと!(笑)
 4月という月。空気までも桜色に染まるような桜の花吹雪の景色と、新生活がスタートするドキドキと不安も詰まった月でもあるのですよね。久しぶりにその感覚を思い出しました。
 さくらんぼのエプロン、かわいいですね。鍵さんにとっても似合いそうだなぁ☆明るい色のエプロンをつけると心も弾みそうですね。私は結婚したときにいくつかエプロンをいただいたのだけど(たんすで大切に眠っています。)、使っているのはこのひとつです。たまには華やかなエプロンをつけたら気持ちも変わりそうですね。食器洗いのお話は私もです。特に最近はますますひどくなっているような…(汗)でも、こちらの人はあまりつけないのかな?そういわれるとこちらの料理番組でも着けていないことが多いですね。お店ではかわいいエプロンを見かけますが…。お母さんのエプロン姿って、胸がくすぐったくなるようなあったかくて、私は大好きな景色です。
Commented by cinnamonspice at 2011-04-15 12:58
+sandyさん+

こんにちは。
sandyさんのお母様のエプロンのお話、お母様の姿がまぶたに浮かんで胸が熱くなりました。sandyさんが贈られたエプロン、お母様はうれしかったのでしょうね。もしかしたら、もったいなくて使えなかったのかもしれませんね。いくつかあるエプロンで、使い勝手のいい年代物を…その気持ちとてもわかります♪私も、結婚したときにプレゼントされたいくつかのエプロンのうち、今のこの一枚ばかり着ています。割烹着が似合うお母さん、あったかいですね。お母さんのエプロンはどこまでも広がってふんわり家族の心も包み込んでくれる気がしますね。
 よもぎ餅の思い出。今思うと昔はよもぎが生えるような野原がまだまだあったのだなぁとのどかな気持ちになります。
Commented at 2011-04-19 18:22 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by cinnamonspice at 2011-04-22 15:51
鍵コメントさま☆

こんにちは。コメントありがとうございます。
エプロンの世界、自分のものも、人のものも、お店で眺めているだけでも楽しいですよね。ふわりと広げたエプロンの中の世界に入っていけそうな気持ちになります。
鍵さんのエプロンのお話を伺って想像が膨らみました。元気が出るデザイン、いいですね。マリメッコのものも、伊藤尚美さんのものも、絵画をそのまま切り取ったみたいですてきですよね。キッチンに立つ時間が楽しくなりそうです。“前掛け”という響き、すてきですね。私はエプロンというと、前掛けというようなハーフエプロンを思い浮かべます。母がよくしていたのもそんな前掛けだったからかもしれませんが、前掛けでさっと手を拭くしぐさとか、とっても女性的ですてきだと思うのですけど。エプロンの話はつきませんね。