ビスケットの缶

ろうそくの火

c0033994_693813.gif
ウェルッシュ・コーギーのミルにどこか似ているリサ・ラーソンのキツネ。

 日がとっぷりと暮れたころ、実家からミル(犬)が亡くなった、と電話がありました。
日本へ帰ったとき、暑さのせいかあまり食事を食べなくなっていると聞いて、庭に出てミルの顔をよく見ると、艶やかな黒い髭もまつげもまゆげも、みんなおしろいをはたいたように白くなっていました。
「ミルちゃんもすっかりおばあさんになったのね。」
久しぶりに会ったあなたの年老いた様子に驚いてそう話したっけ。あなたは「当たり前よ。」というような顔で私の顔を覗き込んでいたけれど。昔、ブラシをかけるときにしていたように「ミィル、ミィル、」と、同じように声をかけると、遠い記憶の中の声を探すようにあなたはうっとりしていたっけ。私たちが日本に居る間に、食欲を取り戻したあなたを見て、ほっと胸をなでおろしていました。日本を発つときには「また来年会おうね、」と言って別れたのに。
 昨日の昼間、ふいに父の足元へよろよろと歩いてきたので、いつものように父が撫でると…がくっと足の力が抜けて眠るような静かな最後だったとのことでした。いつも一緒だった父の庭で、父の傍らで息をひきとる、こんなに幸せな最後はないように思いました。
夏の過酷な暑さがやっと去ったころ、ろうそくの火が燃え尽きるように、静かに小さな命の火が消えました。ミルが死んだ夜は、とても奇麗な満月が空に浮かんでいました。
今はじっとしていると、涙がこみ上げてきてしまいます。
[PR]
by cinnamonspice | 2009-09-05 08:29 | まいにちのこと